5.NGMサービスの例

  1. 組織と職務・業務分掌事項と給与体系

     日本企業の中規模の在独技術製品販売会社の日本人社長から、業務分掌事項と給与体系を整備したいとの相談がありました。 問題は、インフォーマル大ボス小ボスの存在と不服従傾向・職務の複雑化による絶えざる昇給要求でした。最初のadviceは、以下のように、まず、改善すべきことの指摘でした。

    (1) まず第一に、組織・職務を標準化ないし世間並みにすることです。
    標準組織とは、社長の下に各セールスマン・Technical Support長・管理部門長を直結することです。 横の連絡調整・専門家部下の管理指導は最大限このレベル以上ですべきです。  社長は資本の代表として、下位の職務を、とくに何段階にもわたって兼務しないことです。 言葉とローカル・ノウハウ上の必要があれば、このための忠良有能で経験豊富な社長専属スタッフを置くことです。 年令にこだわり、職務部分的・組織横断的な細かな上下関係を数多くつくらないことです。 一部のエリート以外は専門能力・専門職意識が旺盛です。細分化され充実した長期間の実習を含む専門教育とこれから得られる成績・資格によって将来はほぼ決まるからです。管理業務・横向き業務の小出し付加によってモラルアップされるよりも、extra業務とみなし面倒がり昇給の理由ともみなします。

     網の目のような職務の部分的兼任をしないことです。 能力・TPO・必要性に応じての手助け・協力が頻発・半定常化するほど、ピラミッド組織はネットワーク組織に近付きます。 ネットワーク組織は創造的な活動には適していますが、その実質的な指導者・まとめ役・ボスは活動の進展段階・TPOにより全組織上・部分組織内で交替していきます。 オーケストラの指揮者は不在で、全員がジャズ奏者のようなものです。

     特定の技術製品を特定分野の顧客に継続的に売っていく御社の組織はピラミッド組織の方が適しています。 しかし、未だ専門能力が確立していない若年従業員が多く、指揮・指導経路が多分にネットワークになっている場合には、大小のインフォーマル・ボスないし「牢名主」が発生し易くなります。 さらに社長の最終調整決定権を分割準丸投げした場合には群雄割拠となり、集中的に準丸投げされた中間管理者は最大のインフォーマル・ボスとなり、その覇権意識から社長をないがしろにしたりします。 会社はドイツ村落共同体になり、全社の国際的Corporate Identityから離れて行きます。


    (2)欧米、とくにドイツでは企業の職務・組織は事実上標準化しています。これに対応して、教育制度と個人の専門分野・資格・キャリアも標準化しています。 日本企業における法曹資格なき法学士・マクロ経済学士を主とする事務屋という職種は存在しません。 前者は法曹資格を取れないと予想した場合、早めに他の資格取得に転進します。 後者の就職先は大学・経済研究所・大金融機関・官庁などです。 このような学歴の人物は中小メーカーにはいませんが、いるとしたらタダの事務員・単純秘書並みからスタートしなければなりません。 営業に配置され抜群の成績でも上げない限り、すべてが専門資格所有者である他者を追越すことはたいへんです。 日本とは大きな相違があります。

    したがって、現状の御社の職務分掌事項と給与体系を作っても、標準的な専門職種の標準的な組織化から外れた部分が多くなります。 すなはち、ready-madeでは間に合わず、相当な例外的tailor-madeになり、ドイツでは特異な現状の追認・固定化になります。 各人が標準職種からはみだす分の給与増額を要求しますので、給与総額も増大固定化につながります。 また、職務にぴったり適合する専門・資格が存在しない場合が多く、新規採用は難渋します。 

    しかし、日本人社長のなかには、私共リクルート業者に向かって「どうです、難しいでしょう」と、ご自身の複雑高度精妙な職種の創造考案能力を、リクルート可能性より重視し、誇りに思っている方もいらっしゃいました。


    (3)在欧中小日本企業の日本人社長は、通常日本における中間管理職が派遣されます。 企業全分野のドイツ的経営管理の知識と経験・資本の代表としての自覚と行動・標準化された専門資格に対応する標準的な職務さらにこれに対応する待遇、などの習得・習熟には時間を要します。 

    ドイツないしゲルマン圏では、教育終了(University, FH)は30才前後・博士(Dr.)では35才以後となり、日本または英国および多くのラテン諸国より高齢です。 教育内容は専門的・実務的に詳細です。 適職すなはち適合した専門職種に就職後、速やかに自主独立的に業務遂行可能との自負心を持っています。 このような自主独立専門家の並立と管理専門の管理者への直結が、重要な組織原則です。 この原則は年令・待遇を超越しています。 僅かな年令差による兄貴分・弟分の設定と面倒見・見られの継続的関係は両者とも好みません。 若い管理者の下に年上高収入のセールスエンジニアが直結することもあります。 ただし、このような管理者は、エリートの若年時であったり、オーナー社長のスタッフ兼務であったりすることも少なくありません。

    ドイツでは、年令の枠を外し、35才以上のプロ意識の確立したドイツ人をその専門に対応した職務に配置し、ストレートな上下関係のみであれば、やるべきことは理解しており、自己評価は妥当であり、自己の待遇の世間相場を知っています。

    御社においては、職務の専門化・組織の標準化・ピラミッド組織としての簡素化を行い、このために必要な解雇・採用を行なえば、多くの御社規模のドイツ企業と同様に、成文化した業務分掌事項・給与体系などなくても皆が納得し、コンセンサスも自生してうまく行くでしょう。 はやくMini Ghosnさんになられることを願っています。
  2. 食品分野のSales Manager(3 9才)コンペティターからスカウトしました。この人物は蘭英独仏 語を話します。食品分野のセールスマンはタイトルが大きく、社内独立セール スエージェントのような気概をもってオーナー社長と販売目標の交渉をする といった独立タイプが多いです。
  3. Car parts世 界No.1のDelphi Automotiveの欧州子会社からDPF(Diesel Particulate Filter) のDesign In SalesのためのTechnical Support Dr. Engineerを採用しました 。この人物は廃棄ガス触媒の専門家であり、多くの自動車メーカーのDPF関 係の技術者と面識がありました。さらに、英語・フランス語を話すドイツ人 でしたので、欧州の主要自動車生産国カーメーカーとのコンタクト維持が容易に なりました。
  4. Lexmark FranceからSales Director(Dealer Sales) を、フランス販売会社の現地人トップとしてスカウトしました。上司は欧 州統括会社の日本人社長です。
  5. 日英蘭語で 業務遂行可能な人物を欧州社長秘書としてスカウトしました。このような人 物はフリーランスの通訳としても高収入が可能であり、または現職場が重要で働 きがいを感じているケースが多い上、絶対数が少ないので、サーチは難渋 します。
  6. 小型電気モーターおよび制御装置 のStuttgart地区Home Office Sales Engineerを、ユーザーであるIC検査装置メー カーの合理化に乗じて、製品応用知識豊富なエンジニアを採用しました。 顧客 が多数で地域分散し、テクニカル・コンサルティング・セールスとなる場 合は、多数のHome Office Sales Engineerを配置するケースが多いです。
  7. 電子部品のドイツ南部地区Sales Managerをコンペティターから採用 しかけました。クライアント企業は、e-mailでの細部の条件交渉が長引きながら 、採用条件の大要を記載した採用のwritten confirmationを渡さない上、 雇用契約書の完成提出が2ヶ月遅れました。予定どおり入社するために退職して いた候補者は、日本本社の方針変更などによる採用中止かと疑い、失業者に陥る ことを恐れて、この間に採用申し出のあった米系コンペティターに就職してしま いました。採用通知は日本企業にとっては採用決定ですが、欧州人にとっては 雇用条件交渉開始の合図に過ぎません。交渉中のみならずその後の試用期間 中も求職活動を継続していることが少なくありません。良い人物と判定したら、 試用期間を短縮した方が安全です。また、失業者に陥った場合の損害賠償裁判 において、e-mailは雇用意図を示す証拠とはなりません。
  8. 機械部品のドイツ南部および中部地区のHome Office Sales Engineer 計2名を採用しました。
  9. OA機器制御用内蔵Programm のProgrammer2名を英国と中国から採用しました。この時期は需給が逼迫 していましたのでサーチ地域は東欧、南米にも及びました。 現在は需給が緩んだ上、インターネット広告がこのレヴェルのサーチ方法となり、かつ有名企業の広告は世界中の中小・学生インターネット・リクルート会社が箔付けのため無断転載したりするので、世界中から数百もの応募があったりします。
  10. DaimlerChrysler のロボット担当高級エンジニアをサーチし、ロボットの重要部品メーカーで あるクライアントとのロボットの改善・開発の将来動向についての懇談の 場を設営しました。
  11. 日系メーカー欧州本社に おける欧州内のディーラー企業数社の買収およびその後の合理化・経営方針策定 のための欧州社長スタッフを、ローカル日本人としてサーチしま した。
  12. 日系OA機器重要部品メーカー多数の 概要および提携の可能性を調査し、その一部とは技術提携またはM&Aを目 標とした会談の場を設営しました。クライアントは欧州系企業でした。
  13. 医療機器分野のクライアントに、General Product Manager(38歳)を 、超音波医療機器のマーケットリーダーであるDornier Medizintechnik社から スカウトしました。
  14. 食品分野のクライ アントに、Assisatant Marketing Manager(24才)を、Stollerk, Alpiaチ ョコレートからスカウトしました。チョコレートはマーチャンダイジング ・マーケティングにより大幅な付加価値増大が可能なチャレンジ食品なので、 若く有能なとくに女性マーケティング・スタッフの憧れの分野です。
  15. Digital Imaging 分野のクライアントに、全欧マーケティング活動のcoordinatorとし てAssistant Marketing Manager(29才)を、この分野の大規模ディストリビュ ーターからスカウトしました。蘭英独語を話します。
  16. ディーゼルエンジン分野のクライアントに、建設機械用ディーゼルエンジン のドイツ市場本格攻略の先鋒としてNational Senior Sales Manager(46才) を、ドイツ市場No.2のPERKINS Diesel Enginsからスカウトしました。この時期 ドイツ市場の約7割はDeutzとPerkinsの2社が押さえており、クライアントの希 望はこの2社からのスカウトでしたが、外回りセールスマンは合計5名し か存在せず、この人物が最若年かつ唯一の候補者でした。 しかし、中堅企業間のトップセールスが支配的なこの分野では、日本人欧州社長が外国にあり、ドイツ営業所のサラリーマン・セールスマネジャーでは顧客に食い込めませんでした。 現在は外国にある欧州統括会社社長のタイトルを持っているのは貴族名のドイツ人です。
  17. パワートレイン関係高級特殊自動車部品メーカーのドイツ市場参入のために 、DaimlerChrysler, Volkswagen, ZF Friedrichshafenなどに技術チャネルのあ る小規模カーパーツディーラーをサーチしました。ドイツではパーツメーカーの 直納が多いので、自動車メーカーの購買部門から出入りのディーラーのリスト と評価を入手することから始めました。最終的に、数年前直納になるまでこ のパーツを扱い、かつオーナー経営者3人共以前は独仏自動車メーカーの技術者 であった優良ディーラーを選定できました。
  18. 携帯電話用バッテリー分野のクライアントに、欧州Sales Directorを、携 帯電話用電子回路チップの大手サプライヤーAnalogue Devicesの欧州セールスト ップからスカウトしました。顧客は共通です。
  19. 食品のSales Directorを、米国の大手食品会社CPC社(Corn Products Company )の欧州小会社からスカウトしました。CPCはPhanni, Knorr, Malzena, Ubena などのブランドで知られています。
  20. 自動車 のR&D Centerの走行テストチームのChief Test Engineer (manager)(49才 )を、GM OpelのRacing Team Chiefからスカウトしました。このエ ンジニアは、当時日本製自動車の弱点であったブレーキの元専門家でした 。
  21. 光学機器のDr.Marketing Managerを 、Max Plank研究所とならび有名なFraunhoffer研究所からスカウトしました。顧 客である大学・研究機関と高度専門的な打合せが必要になるからです。
  22. 測定装置のソフトウェアのヨーロッパ・サービス・トレイナーを、多数のメ ーカーの測定装置を扱っている専門ディーラーからスカウトしました。欧州コン ペティターの質の高いトレイナーはすべてサーチ仕様より年令・給与が高過ぎま したので、多くの無名ディーラーのソフトオタクをサーチし難渋しました 。
  23. ハイテク・コンシューマーグッズのオー ストリア販売拠点のChief Country Managerとして,ドイツ系流通最大手Metro グループ企業の元Managing Directorで、1年間米有名ビジネススクールに留 学卒業直後の人物を採用しました。
  24. 市場開拓 不十分なスイスにおいて、ブランド食品のディーラーをサーチしました。 ディーラー候補は、ブランド食品を扱い、かつこの故に、通常は不可能な2大 スーパーチェーン、MigrosとCoopの双方に納入していることが条件でした。
  25. 医療器械のスウェーデンのStockholmとMalmoeにおけるディーラーをサー チしました。現地の病院リストを入手し、その相当部門に出入りするディーラ ー名と評価を電話ヒアリングすることからスタートしました。医療器械ディ ーラーは、兼業ディーラーが多い上、医療器械自体多種雑多だからです。
  26. マイクロチップ製造装置のスペイン電話会社、Telefonicaへの販売条件が、現地Madrid へのサービスエンジニア1名の常駐でした。エンジニアの採用のほか、事務所 設営、サービス会社設立、補修部品輸入業許可取得などをお手伝いしました 。
  27. ラトヴィアのRigaは開放前ソ連の通信機 器の製造センターでした。電話交換機、電話機は7割、通信用マイクロチッ プ、軍用通信装置、ラジオ、ラジカセ、コンポ、スピーカー、さらには冷蔵庫、 洗濯機などの大製造工場があります。戦前のドイツAEGの工場群を発展させた ものです。ここでの電子デバイスのアッセンブリーの可能性調査などに多 くの日本企業を案内しました。

  28. ハンガリー において、建設機械の消耗部品、エアコンのコンプレッサーの鋳物部品、ロボ ットの躯体部品、などの委託生産の可能性調査、クレーン下6mの10tonクレ ーン2基を備えた機械組立工場のサーチ、ブタペスト中心部における 高級化粧品のアンテナショップ開設を目指しての店舗確保の可能性と費用な どの調査を行いました。

  29. 組織成長時には年間契 約によるスケジュール・リクルートをいたします。ある半導体製造装置メー カーには、3年間にわたり全社員百数十名のうち約半数を、西欧各国において採 用しました。最も多い職種はサービスエンジニアでした。

  30. 大手医薬品会社の欧州新薬開発センター(当時在Frankfurt)所長として、ド イツの中堅以上の医薬品メーカーの本格的R&D部門のトップ約15名のなか から、戦後長くこのクライアントのライセンサーであったBayer の人物をスカウトしました。 医薬品業界にのみ特化したエクゼクティヴ・サ ーチ・ファームには、クライアント筋の重要人物に漏れなくアプローチすること は不可能です。

  31. ハイテク分野のクライアントが, EUのR&Dプログラムの有力メンバーであるDr.Prof.Xを社外コンサ ルタントとして契約しました。フィーは秘書の給与並でした。四半期に一度 、技術動向・企業動向・製品動向についての報告書を提出し、クライアン トの専門家との半日討論があります。この他に、この人物に専門分野 のコンファレンス・学会などに参加してもらい、外部の専門家にクライアントが 尋ねてみたい質問をしてもらうなどの特命調査も、中堅弁護士なみのフィ ーで実施することになりました。

NGMグループ代表
永野 嘉彦 : NAGANO, Yoshihiko
NGM Consulting GmbH
www.ngm-glocal.de
Center Office, Koenigsallee 60F, D-40212 Duesseldorf
Nagano Office, Eisen Str. 31, D-40227 Duesseldorf
Tel; +49 (0)211-34 00 34 (代表)
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nagano@ngm-glocal.de