2−1.人材発掘の方法と特徴−スカウト ダイレクト・サーチともいう伝統的なExecutive Searchです。 中堅クラス以上または技術・セールスなど特殊専門的な人材の発掘に適しています。 同業他社などの相当するポジションの人物あるいはNo.2の人物に、 本人が転職に関心があるか否かにかかわらず能動的に接触します。 原則として有望な候補者3名前後が見出されるまでサーチを続けます。 転職希望者がいない場合もあります。 この場合クライアントと相談の上、 セールスならば、顧客が同じでセールス財が類似のセールスマネジャーなどにサーチ対象を 広げたりします。 したがってワーク量が多くなり、スカウト・フィーは年俸の 35%またはminimum fee EUR 29,700になります。 ワーク量がフィーを超える 場合には、クライアントに相談するなり、人事異動待ちの積極的ウォッチに移行 するなりします。スカウトの潜在候補者は数名から20名以内に限られる場合が殆どです。 スカウト・サーチの候補者は、現在の職場で将来性がある人物が多いので、求人企業は、企 業および担当分野の将来、職務・権限・トップ・上司・部下・待遇などの勤務諸条件が総合し て現在の勤務先を上回っていることを説得出来なければ、求人に成功しません。 またインタ ヴュー後速やかにやかに回答・反応しなければなりません。 遅いと感じた候補者は、自分はフ ァースト・チョイスではないのではないかと疑い、急速に転職の意欲を失うからです。 「あな たで我慢しときまよ」というムードを出してはいけません。 採用においては、結論が出るまで 「是非お願いします」という応接姿勢を堅持すべきです。 サーチの準備段階は、仕様の打ち合わせです。 打ち合わせの結果をCompany, Job, Candidate, Internal informationなどに文書化して確認します。 前3者は多数の外部者に 伝えてもかまわない情報の限界を確認することにもなります。 例えば、00会社、日本企業、 國際企業の欧州子会社、業界のリーディング企業のどれを選ぶかなどです。 サーチをしている ことが不必要に外部に広がらないようにするためです。 サーチの第一段階は、人材源企業・潜在候補者の氏名とコンタクト方法(通常は電話番号) の調査・リストアプです。 これには2ヶ月を超えることもまれではありません。 第二段階は、求人企業は匿名のまま潜在候補者と電話で大まかな情報交換をして転職へ の関心の有無を聴き取ります。 次にNGMが有望候補者と面接し、転職は有望と判断した段階で、 求人企業名を告げます。 クライアント名をディスクローズするタイミングは通常NGMに 任されています。 第三段階は、クライアントすなはち求人企業との面接です。 ここでは候補者の入社意欲を高めるように配慮しながら能力・人物についての情報を入手します。 厳しい尋問調で能力・人物を正確に評価し選別しても、先方が入社意欲を失ってしまえば 無意味だからです。 競合求人企業がある場合は負けます。 インタヴューは充分高位の社員、 通常は社長がリードすべきです。 社長の利益は会社の利益ですが、入社後競合関係になりうる 社員はインタヴュー時点から将来のライバル排除の動きをすることがあるからです。 第二及び第三段階は迅速に進め、情報が漏洩し、サーチが壊れてしまう可能性を少 な くしなければなりません。 一度壊れたサーチのやり直しは非常に困難または不可能 になることもあります。 従って、長期出張または長期休暇中の潜在候補者は捨てざ るを得ないことが起こります。 また、求人企業側は面接出席者の長期出張などのな い時期を選ばなければなりません。 失業者はクライアント側の事情から原則としてスカウトの対象外になります。 将来、販売目標を達成できなかったときなどに、責任が採用決定者に及ぶのを 避けるためです。 サーチの進捗状況報告は、第一段階では動きが少なく、ゆるやかに見えることが多いので、 NGMは督促されたりします。 第二段階ではNGMとの面接で転職を取り止め、NGMと会ったことも機密にしてくださいと要請する 候補者もでてきます。 NGMは候補者のprivacyを護り、クライアントには仕事をしていないように 見えることもあります。 ご自分がスカウトされることをお考えいただければ、NGMの行為は ご了解いただけると思います。 また、このような候補者が航空機を利用した場合、航空料金を 直接御社に請求してもらうことはできません。 NGMが立替支払った場合でも航空券を付けて 御社に請求することはできません。 この場合航空料金相当額をNGMの変動コンサルティング・ フィーとしてVATを加えて御社に請求することも起こります。 経理出身の総務部長氏が このような処理を受け付けず問題となることもあります。 第三段階はインタヴューの日時調整・時間待ち・インタヴュー実施ですが、突然の予定変更 により調整がつかずインタヴューが大幅に遅延したり、その結果候補者が欠けたり、 最悪の場合はサーチ全体が崩壊してしまうことも起こりえます。 NGMは心配し御社に スケジュール上のたっての御願いをしたりすることもある段階です。 スカウトにおいてNGMは、クライアントを1分野・1時期・1社に限定することにより忠 誠を尽くしています。 これによりサーチ・ソース企業と潜在候補者のすべてをクライアント1 社のためにのみ利用して、高品質なスカウト・サービスを提供しています。 国際的な大規模ヘッドハンティング会社は、リクルート・ソースの制約という点で、日本企 業にとって大きな不利となります。 すなはち、日本企業向け人材の良好なリクルート源であ る優良な欧米企業が、世界のどこかでこのヘッドハンティング会社のクライアントになり顧客リ ストに載った場合、この企業は密かにリクルート源から外されてしまうからです。 リクルート 会社がスカウト・サーチのビジネス量の大きさを誇ることは、顧客サービスの品質低下を意味し ます。 大規模國際企業は,多数の自社用スカウトを多数の大手ヘッドハンティング会社に分割発注し、 それらの顧客となって、自社の有能な従業員がそれらの大手リクルート 企業によりスカウトされるのを世界的に防止したりしています。 ヘッドハンティング業者の選定に当たっては、できるだけ小規模かつ競合他社を顧客に していない、すなはち業界事情に詳しすぎないExecutive Search Firmを選ばなければ なりません。 2−2.NGMサービスの方法と特徴−広告・インターネット 中堅以下かつ一般的な職種のリクルートの場合、時間・費用において経済的です。 リクルートされる人物は、何らかの理由で現在の職場を離れたく、自らのイニ シャティヴで転職しようとしている人、失業者、新卒者などに限られます。 地位の高い人物ほど広告・データベースによる転職は好みません。 応募者は多数の求人先に同時に応募していることが通常なので、インタヴュー および採用の通知は迅速に行い、競合他社に打勝つことが肝要です。 尋問調の インタヴューにならないようにし、先方をほめたたえ共に働こうとの願いを伝え、 入社意欲を高めます。 冷静な評価は後行います。 先方が他社を選んでしまった 場合選別の対象にもならないからです。 候補者が採否の決定を問合せてくる場合 は優先順位の劣る他社から入社の諾否を迫られている場合が多く、諾否の回答を引 き延ばそうとする場合は優先順位上位の他社からの回答を待っている場合が多いので、 これらを考慮した応対が必要です。 広告媒体は、欧州各国においてそれぞれ全国紙は1〜2紙です。1回の広告掲載費 用は大きさによりますがEUR 3,000〜10,000です。地方紙は割安になります。さら に専門紙・誌があります。週末明けから3〜4週間程度のインターネット広告も 併行利用できるケースが多いです。 インターネット広告を通じた転職が過去数年の間に急増してきました。ドイツに おいては、全広告による転職に占める割合は、2001年に約10%、2002 年に約30%、2003年にはミドルマネジャー・レベルにおいて60%弱に達 したとの調査報告があります。 広告の主流は印刷物からインターネットに移り ました。 インターネット・リクルート・サービス専門企業は、数年前まで多数乱立でしたが、 現在は大型寡占の方向にあります。 これらのサービスは求人企業のみならず外部の リクルート企業、NGMも使っています。 第一のサービスはインターネット求人広告の掲載です。広告期間は3−4週間ぐらい が標準です。新聞広告よりはるかに安く、約5〜10分の1ですが、最近は数百ユーロ のバーゲンもあります。 広告料金は低位安定化し、寡占大型転職仲介企業のインター ネット求人求職広告サイトは、半公共サイトのようになっていきつつあります。 公共 職業安定所が無料公共サイトサービスを充実させるべきとの論議もありますが、現在の ところサービススピードで民間サービスに劣っています。 第二のサービスはデータベースからの候補者の検索です。データベースの稼働率向上を 狙って、成功報酬としているケースも少なくありません。 データベースサービスのコ ストは殆ど固定費で新たに発生する変動費は僅かだからです。 データベースの不断 の更新メンテナンスはコスト的に困難なので、大きさよりもアクティヴな求職者数が問 題です。 広告応募者のうち就職できなかった人々はデータベースに繰り込まれ、6ヶ 月後に消去されるなどされてます。 大規模有名なデータベースほど求職者が集まって きますので、求職者・仲介企業・求人企業の何れにとってもますます有利になり、より 一層有名化・大型化・寡占化する傾向にあります。しかし、積極的・能動的な人材サー チではないので、求める人物を発見できない場合には、求人企業は速やかに他のデータ ベースまたは広告・スカウトに移行しなければなりません。 インターネットリクルートサービス業は参入障壁が低く、他事業とのシナジー効果が ある場合も多いので、これからも従来どおり新規参入・M&Aなどが多く、業界は流動的 でしょう。 |